札幌市中央区の当事務所では、これまで数多くの会社設立業務に取り組んできましたが、会社設立のご依頼人から聞かれることは、だいたいが似たり寄ったりのことです。

よく聞かれることとして、「会社設立をするよりも、既存の会社（法人格）を買った方が安く済むし得策だと聞きましたが、本当ですか？」というご質問があります。このご質問について、札幌の会社設立の専門家が説明します。

まず確認しなければならないのが、会社を設立した場合にかかる費用です。以下では、会社設立でもっとも一般的な「株式会社」を例にします。

たとえば札幌市内で、札幌商事株式会社（資本金50万円）を設立する場合、次の費用がかかります。

以上にあるように、会社設立の実費として22万円もの費用がかかります（電子定款によって手続を進める場合は、印紙代4万円はかかりません）。また、これ以外に司法書士などの専門家に依頼した場合は専門家報酬がかかることになります。

会社設立するよりも会社を買った方が得策、という場合の「会社」とは、ほとんどの場合は稼働していない休眠状態の会社です。昔は従業員や取引先がいたとしても、今ではもう稼働せずに、放置された状態の会社が札幌のみならず日本全国いたるところにあります。このような会社を、オーナーから買い取るのです。

買い取る、というのは、株式を買い取ることを意味します。世の中の多くの中小企業はオーナー社長が100％の株式を保有していることが多く、その100％を買い取れば、会社設立をせずとも、会社はたしかにあなたのものになるでしょう。

会社を買うことについては、確かにメリットもあります。

一般的な話ですが、休眠状態の会社を買うことは、前述した会社設立費用よりも安く済むことが多いといえます。休眠状態というからには、前社長はその会社にまったくこだわりはなく、設立時にかけた費用の一部でも回収できればいい程度に思っていることも多いものです。会社設立をすると20万円程度の実費がかかるところ、休眠状態の会社であれば数万円で譲ってくれるオーナーだっているでしょう。

現在では「有限会社」を設立することはできません。有限会社は、旧法時代のものであり、現在の会社法においては設立が認められていないのです。

このような有限会社ですから、「有限会社」というだけで、「旧法時代の会社＝昔からある会社＝信頼できる会社」という評価を受けることが多くあります。社歴を気にする業種であれば、たしかに休眠状態の有限会社を買い取って事業を始めることは有効な面があるでしょう。

会社を買い取れば、その会社の社歴を引き継ぐことができます。

会社設立であれば、設立登記申請を行った日が会社設立日になりますが、休眠状態の会社を買い取れば、その会社の登記事項証明書に記載のある「会社設立日」が会社設立日になります。当然、昭和の日付が登記されていることもあり、数十年にもわたる社歴を引き継ぐことができるのはメリットだといえます。

しかしながら、札幌・札幌近郊で会社設立業務に取り組む当事務所では、会社設立をせずに会社を買い取ることはまったくもっておすすめしておりません。おすすめしないどころか、何らかの特殊な事情がない限り、辞めた方が無難です。

会社設立をせずに会社を買い取ることには、明確なデメリットがあるからです。デメリットは次のとおりです。

現時点では休眠状態の会社だとしても、以前は稼働していたはずです。会社が稼働していた以上、その会社には以前は取引先があり、いくつもの契約関係があったはずです。

会社設立をせずに会社を買い取る場合、その契約関係も引き継ぐことを理解しなければなりません。契約関係を引き継ぎ、その契約から生じた義務に拘束されるのです。会社にとって有利な契約ならまだしも、当然ですが不利な契約を締結していた可能性だってあるため注意が必要です。

買い取った会社が有していた債務があれば、当然ですがその債務も承継します。

会社設立をせずに会社を買って起業する場合、通常は前オーナーから「会社が有している債務はありません」等の表明を受けてから会社の株式を購入するものです。

前オーナーが、「会社には債務はない」と表明したからといって、本当に債務がないかどうかは定かではありません。前オーナーがその会社で事業を行っていたのは昔の話でしょうから、債務の存在を忘れている可能性だってあります。会社設立をせずに会社を買い取って起業したところ、事業が軌道に乗ってきたタイミングで多額の債務が明らかになる……、このような悲劇は避けるに越したことはありません。

この点については、札幌で会社設立業務に取り組む私の個人的な考えです。

会社を設立する際は、ゼロからイチを創るわけですから、起業家の皆さんは会社に非常に強い思い入れがあります。絶対に軌道に乗せる、と意気込んで自分自身の子供を生み出すような覚悟で会社設立をするのです。

一方で会社設立をせずに会社を買い取って起業した場合は、どうしてもその意気込みが弱くなってしまいます。会社設立は多額の費用がかかるとしても、それは「覚悟を決める」ことにもつながるため、悪いことではありません。

このように、会社設立をせずに会社を買い取って起業することは得策ではありません。

札幌で会社設立なら、当事務所にお任せください。あなたからのご依頼をお待ちしています。

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